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作るだけじゃない, 緑の「手入れ」もデザイン
2022.02.01 シチズン本社東京事業所

ランドスケープ専門家は建築分野と協働する機会が多いのですが、ランドスケープと建築の違いの一つは、「完成時期」です。「建物が建ったときが、すなわち完成じゃないの!?」と思ったあなた、そうとは限らないのです。ランドスケープは自然物、特に木々を扱う分野ですが、木々は竣工してからも成長しつづけ、生態系も時間を経て変化する・・・そうした時間において建物の竣工は、ランドスケープが完成するまでの一時点に過ぎないのです。

とはいえ、事業者にとっては竣工時のインパクトも必要。人を惹きつける場の魅力があり、生態系サービスを提供できる基盤に仕上がっていることは大事です。竣工時だけを見据えるのではなく、その先5年、10年、30年と想定しながら竣工時にいったん仕上げることを考えています。木々は育っていくので、庭の考え方と同じく、手入れが欠かせません。

2019年に完成したシチズン本社の緑地整備計画においては、設計だけではなく、「ランドスケープの使い方・木々の育て方」についての管理パンフレットを作成しました。ンチを食べたり、人と対話したり、ちょっとしたPC作業もできるはず。ときには、子連れ参加のカブトムシ採りやBBQ、防災訓練などの社内イベントもできるでしょう。そうした屋外の使い方に結びつけながらせながら、社員自らができる植栽管理の手引きとして手書きで作成したものです。

通常では、事業者が業者に敷地内施設の管理業務を発注し、建物の管理や緑の手入れに社員が関わるケースは極めて少ない。しかし、植栽に関しては管理そのものがウェルネスやコミュニケーションの向上につながる可能性があることは見過ごされています。すべてを業者任せにしないことで、会社の緑地が自分ごととなり、庭のように愛着を持つことができます。さらに、管理費の軽減にもつながります。

こうした手法や流れをパンフレットに示し、事業者の広報部や有志の方々、植栽管理業者に配布し、実際に緑地を歩いて説明しました。緑地という施設は完成時期も、それ以降も大事。緑地の活用や手入れに対する取り組みも、設計段階で加えながら提案したいと思っています。